
ところでカレーマン、カレーの「味」のことはわかったけど、カレーの「形状」はどんなだったのかしら?

水気が多くて薄められていたらしいで。

えっ、水気が多くて薄められていたですって?

らしいで。

そんなはずないじゃない。判決文には、東鍋のカレーはとろみが付いていたとハッキリ書いてあるのよ?
共同記事と判決文、ウソはどっちだ

そこなんやが、中日新聞と判決文が思いっきり矛盾してんねん。同じ記事が産経にもあったから共同通信の配信やな。スクープや。
住民らからの聞き取り調査でも、最初に食べた大なべのカレーは調理終了時より、水気がかなり多く、薄められたような状態だったことが判明。犯人が亜ヒ酸を多量の水に溶かし、混入した疑いがある。/1998年8月6日 中日新聞夕刊社会面(共同配信)

「水気がかなり多く、薄められたような状態だった」……。本当ね。判決文と正反対だわ。

正反対やで。
| 共同記事 | 水気がかなり多く、薄められたような状態 |
| 判決文 | 水っぽくはなく、普通のとろみの状態 |

7月27日の読売に「味が薄くて子供用に作ったのかなと思った」というコメントがあるわ。8月1日の和歌山新報には「水っぽくてまずかったけど、べつに変わった味はしなかった」というコメントも。「薄められたような状態」と符合するわね。

カレーの第二次再審を担当した生田暉雄(てるお)弁護士の緑の本に載っている事件直後の新聞記事のなかでは、その2つぐらいやな。
あと、「水気が多い」の情報をスクープとして書き換えた記事を産経が同じ8月6日夕刊の東京版に出していて、ほかの情報も足しているで。
捜査本部では、犯人はヒ素と青酸化合物を多量の水に溶かし、混入したことをうかがわせる証言とみて重視(略)
捜査本部の聞き取り調査に対し、当日、カレーを食べた被害者は「一、二口食べただけで気分が悪くなったが、粘り気が薄くてシャブシャブした感じだった」と証言した。
一方、調理を担当した住民は「水の量を考え、ちょうどいい濃さになるように調理した。完成し味見したとき(筆者注:正午ごろ)は薄い感じはしなかった」などと証言した。/1998年8月6日 産経新聞 東京夕刊

「粘り気が薄くてシャブシャブした感じだった」「完成し味見したとき(筆者注:正午ごろ)は薄い感じはしなかった」──。
これも事実なら「即無罪」よね。眞須美さんが青色紙コップで混入したのは、A〜Fのいずれかの「粉末」というのが前提だもの。

粉末が前提や。
いったん付いたとろみは──

カレーやシチューのとろみって、いったん付いても、5時間ほどたったらまた溶けるのかしら?

GeminiとChatGPTに訊いてみたら、とろみがしっかり付いていれば基本的に残るがゆるくなることはある、という感じの回答やったで。

ゆるくなっても再加熱すればとろみは復活するものじゃない?

せやな。料理をする人ならだれでも知ってることや。

判決文によると、カレーは午後5時に再点火して1時間ほどかき混ぜているから、またとろみは付くわ。午後6時ごろ食べるときに「シャブシャブ」はあり得なくない?

あり得へんな。

だとすると……

だとすると……

記事のとおり、だれかが水を入れた……。

入れた。

せっかくいい感じにとろみが付いたのに、水を入れて台無しにする?

考えにくいな。

ということは……

ということは……

記事のとおり、毒物を水に溶かして混入した……。

そう考えるのが自然やな。

裁判ではカレーのこういう「形状」については争ってないのかしら?

まったく争ってへん。

そっかあ。カレーの味もそうだし、形状も裁判では争ってないのね。他紙のあと追いや中日と産経の続報はどうかしら?

他紙はどこも追いかけてへん。7月25日から8月末までG-Searchで検索したがヒットなしや。それに、中日と産経の続報も一つもないんや。

あと追いも続報もない。8月6日の記事だけなのね。他紙はなぜ追いかけなかったのかしら?

中日の記事は「毒物は亜ヒ酸と判明」という趣旨で「水気」のことは付け足しやったから、追いかけるほどではないという判断やろな。産経がスクープ扱いしたのも東京の版やったから和歌山にはインパクトが薄いと。

なるほど……。本来ならもっとあと追い報道があって掘り下げられていい情報だけど、いろんな条件が重なって孤高の記事みたいになったのね。

その4日前の8月2日にヒ素が検出されて、捜査が仕切り直しになったのもあるやろな。捜査も取材もアナーキーな時期やったと思うで。


「被害者への聞き取り調査」が見たい

なるほど。とまれ、捜査本部のその「被害者への聞き取り調査」というのは是非とも見たいわね。

めちゃめちゃ見たいな。検察は公判に出してへんやろから、再審請求審で証拠開示請求したいところや。

この情報の証拠価値はどうかしら?

事実やとするとかなり大きいと思うで。もしかしたら「即無罪」にいちばん近い情報かもしれへん。

そうよね。カレーの「味」についてはこの記事でも書いたけど、判決文との矛盾が「ヒ素だけ」で説明できてしまうかもしれない。でもとろみの有無という「形状」については、判決文との矛盾が説明できないわ。

しかし、事件直後の7月27日の新聞に、形状について被害者のコメントがほとんどなかったことを考えると、全員が「シャブシャブ」というわけではなかったのかもしれへんな。

たしかに。「犯行機会」の記事に書いたのと同じように、直前に混入したからとろみの有無も人によってバラバラだった可能性もあるわね。


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