
ねえカレーマン、「シンク下プラ容器」って捏造なの?

捏造やで。

やっぱりそうなのね。インターネットでそう言われているもの。

インターネットで言われているのは、「80人の捜査員が家宅捜索して4日めにようやく見つかったなんて不自然だ。台所なら初日に見つかるはずだ」というやつやな。
「80人が捜索して4日目に発見なんておかしい」という例の

そう、それよ。なにか間違っているの?

間違いというか、裁判官にかんたんに反論されて終わりということや。確定一審判決にも(この段階では捏造の疑いはなかったが)発見の経緯が書いてあるで。

家宅捜索が始まったのが、林夫妻を逮捕した10月4日の朝から。
4班編成で捜索にあたったのであって、勝手に先に台所を捜索できるわけではない。
台所のシンク下の収納庫からプラ容器を発見したのは3日目の6日。
押収手続きをとったのが7日。
押収物が多く、床の微物採取もあったので、その経緯に問題はない──。
たしかに、こう言われると反論は難しそうね……。

難しいな。

じゃあ捏造の証明はできないってこと?

真相ってやつは、書いてあることより書いてないことに隠れていたりするで。

判決文に書いてないことですって? それは一体なんなの?
「初日に台所を捜索した」の証拠

この2冊の書籍の記述によると、捜査本部は初日に台所を捜索しているで。
10月4日、第1回目の逮捕と共に検証が始まる。夜明け前から、林員須美宅近くて待機した。私の立場は捜索・検証指導官だ。(略)
現場で着目したのは、やはり下水だ。家屋から出た下水配管は敷地内の下水配管に繋がって、会所という下水溜まりで受け止める形だった。(略)台所などの配管は、外せるところは外して対応し、付着物を根こそぎ採取した。/服藤(はらふじ)恵三「警視庁 科学捜査官」p96
捜索と検証を指導する立場の服藤がまず指示したのは、台所と座敷外の脱ぎ石だった。「台所は(林死刑囚の)お城とも言える場所。家への出入りは玄関ではなく脱ぎ石を使っていたようだった」と説明する。台所は下水配管を全部外して調べた。/甲斐竜一朗「刑事捜査の最前線」(ネット記事からの引用)

本当だわ。警視庁から応援にきた服藤氏たちは、10月4日の保険金逮捕の日、夜明け前から待機していて、「まず指示した」のが台所であると。

林夫妻が台所やトイレからヒ素を廃棄したとかんがえたんやな。

2002確定一審判決も2017浅見決定も、台所の捜索は「10月6日」からと書いてあるわ。全然ちがうじゃない。

ふつうに考えて、食品関係の事件やから台所は最初に捜索するやろしな。書籍の記述との矛盾を裁判所がどう判断するかや。
シンク下プラ容器の証拠価値は

ところでカレーマン、このシンク下プラ容器って、証拠価値は高いの?

あんまり高くないで。

高くないの? なーんだ。

とはいえ、検察は確定一審の論告では、林眞須美先生がお昼のガレージで鍋番をしていたとき、いったん家に帰って、プラ容器の中のヒ素を青色紙コップですくい取り、ガレージに戻ってカレー鍋に入れた、と主張したんや。
| 論告 | プラ容器→青色紙コップ→カレー鍋 |
| 判決 | いずれかの亜砒酸→青色紙コップ→カレー鍋 |

A〜Fの中では唯一、林家から「発見」されたヒ素でもあるしな。
「ヒ素だけ捨てて容器はとっておいた」──不自然な〝論告〟

でも、検察の論告のとおりだとすると、眞須美さんはお昼のガレージでの鍋番のとき、いったん家に帰ったのよね。

帰ったな。

台所のシンク下かどこかにプラ容器があった。その中にヒ素が最低でも135g以上あった。青色紙コップでヒ素をすくった。ガレージに戻ってそれをカレー鍋に入れた。


入れた。

で、10月の家宅捜索でシンク下から「発見」したときには、容器の中のヒ素は、肉眼で粉末は確認できないほど微量になっていた。

なっていた。



ということは、眞須美さんがプラ容器の中身を捨てたということよね。8月2日のヒ素検出のニュースを受けて家中のヒ素を捨てたと眞須美さんが証言している通り。

せやな。保険金詐欺がバレないように。

持っているとヤバイと認識していたから中身のヒ素は捨てたのに、容器は捨てずに持っていた? 側面に「白アリ薬剤」と書いてある容器を??

らしいで。

不自然にもほどがあるわ! なんで中身は捨てて容器はとっておくのよ。「白アリ薬剤」なんて書いてあるんだから容器も捨てるでしょう?

ふつうに考えてもそうやし、林眞須美先生はとくに用心深い性格やで。
8月2日夜にヒ素検出のニュースが流れた翌朝すでに、自分とヒ素は関係ないと警察には答えてくれとお兄さんに伝えたぐらいやからな。

そんな人が容器だけ残すなんて考えられないんだけど!?
ていうか、だから確定一審判決は「プラ容器→青色紙コップ→カレー鍋」のルートは無理だと判断して、「いずれかの亜ヒ酸→青色紙コップ→カレー鍋」と書いたわけでしょう?
| 論告 | プラ容器→青色紙コップ→カレー鍋 |
| 判決 | いずれかの亜砒酸→青色紙コップ→カレー鍋 |

せやろな。つまり裁判官は、検察の主張する犯行方法を否定したわけや。事実上の無罪判決やで。
〝意味不明にもほどがある💢〟確定二審判決

さらに意味不明なのが確定二審の判決や。まさに弁護団が、プラ容器を捨てなかったのはおかしいと主張したのに対し、マスコミが殺到していてプラ容器を投棄するのも困難だったと認定しているんや。

メチャクチャな論理の飛躍ね。そもそも確定二審は、眞須美さんが犯人と結論ありきなのが見え見えだから見たくもないんだけど。

8月3日にはすでにお兄さんに口止め電話をしているわけやし、ヤバイと思って捨てるならすぐ捨てるわな。

そうよ。林家がマスコミから集中的に犯人視されるのはもう少しあとだし、プラ容器をごみ袋に入れて捨てるぐらい出来ないわけないじゃない。ほんとなに言ってんのかしら💢
調味料はどこにいった?──毎日スクープ記事の不可解

ところでカレーマン、このシンク下プラ容器の「発見」は、どう報じられたのかしら?

11月11日の毎日新聞がスクープしたで。

ほんとだわ。判決文によると10月6日にプラ容器を「発見」し、10月12日に容器からヒ素を「検出」したけど、新聞に公表されたのはその1ヶ月後だったのね。他紙はどのぐらい追いかけたのかしら?

追いかけてへん。

えっ、「初めて林家の中からヒ素が見つかった」という貴重な情報なのに、あと追いなしなの?

G-Searchで11月15日まで調べたが、どこも追いかけてへん。

女子高校生の目撃証言みたいにこれも現場では「眉つば」の情報だったのかしら……。実際、その毎日の記事にはこんなことが書いてあるわ。
樹脂製の容器は流し台下の収納庫にあった。ふたのない状態で、中には封を切っていない買い置きの調味料などが入っていた。
「封を切っていない買い置きの調味料など」ってなに? 確定一審の判決文にはそんなこと書いてないわ。「『ふくろ物語』という商品名のビニール袋が入っていた」と書いてあるのよ?

「買い置きの調味料」というのが、いかにも想像で思いつきそうなイメージやが。

それに、記事には「隅の部分に白い粉状のものがわずかに付着していたため」と書いてあるわ。判決文には「粉末様の付着物は肉眼では見付けられなかった」と書いてあるのに。

ていうか、このプラ容器のヒ素は、科警研の異同識別鑑定では微量すぎて分析でけへんかったんやで?

肉眼で確認できるほどの量が付着していたなら余裕で分析できるはずなのに、説明がつかないじゃない。

それと、山ほどある押収物の中から優先的に鑑定に回すなら理由があるわけやが、その理由が、毎日記事と判決文でちがうと。

判決文は「プラ容器の側面に「白アリ薬剤」と書いてあったから」。毎日記事は「白い粉状のものが付着していたから」。
| 毎日記事 | 判決文 | |
| プラ容器に入っていたもの | 買い置きの調味料 | 「ふくろ物語」という名前のビニール袋 |
| 肉眼で粉末の確認 | できた | できなかった |
| 優先的に鑑定に回した理由 | 白い粉末が付着していたから | 側面に「白アリ薬剤」と書いてあったから |

毎日記者にリークしたときもプラ容器には「白アリ薬剤」と書いてあったはずや。なんでそれを言わず、わざわざ「白い粉末が付着」なんていうウソを教えたんや?

どうも毎日にリークしたプラ容器はウソ臭さが満載としか言いようがないわ。もちろん、だからといって判決文の記述が正しいとはならないけども。
似ている……プラ容器と青色紙コップ

でもこれ、あれに似ているわね。

あれ? ああ、あれな。

そうよ、あれよ。

あれのことやな……なんやったっけ?
科捜研の劣等感とスクープ

もう、鈍いわね。青色紙コップとシンク下プラ容器よ。科捜研の関わり、ヒ素を検出した方法、公表のされ方。

おー、せやな。いわれてみれば似ているで。



プラ容器も青色紙コップも、科捜研に搬送されて、グトツアイト法という簡易な検査をしたところ、ヒ素の陽性反応があった。

和歌山カレー事件において「科捜研」は要注意ワードや。青色紙コップの記事で書いたが、和歌山科捜研には(証拠を捏造してでも)汚名返上したいという強い動機があった。不正がうまれる職場の体質もあったんや。

公表のされ方もおなじ臭いがするわ。青色紙コップは、科捜研が8月6日にヒ素を「検出」したときからちょうど2ヶ月後、プラ容器は、科捜研が10月12日にヒ素を「検出」したときからちょうど1ヶ月後、新聞にリークしてスクープとして公表されているのよ。

青色紙コップのヒ素「検出」の朝日スクープは10月6日。4日に林夫妻を保険金詐欺で逮捕した家宅捜索の真っ最中やから、それを機に、カレー事件の犯行手段も表に出したかったとみられるな。

プラ容器のヒ素「検出」の毎日スクープは11月11日。これにも契機があったわ。
11月5日に、林家関連のどのヒ素を科警研の異同識別鑑定に依頼するかが決まったんだけど、そこにプラ容器は入れてもらえなかったのよ、微量すぎて。

異同識別鑑定してもらえないということは補欠ベンチやで。証拠として認めてもらえてへん。

初めて林家の中から見つかったヒ素なのに、これが活用できないとなると捜査本部としては痛いわね。カレーで逮捕できるかどうかにも影響するわ。

そこに焦りを感じて新聞にリークした、とみるのが自然かもな。東京のエリートの科警研に反発したのもあると思うで。

田舎の三流科学警察官の妬みというか劣等感というか……。

それはあるやろな。東京のエリート様がやって来て捜査を仕切られたら、まあ和歌山としてはムカつくやろし。

一線を超えてしまう人間の行動心理として、そういう負の感情が大きいというのはあるわね。

あるあるやで。

青色紙コップ、シンク下プラ容器、ついでに女子高校生の目撃証言も。なんだか、捏造くさい証拠はこんなふうに非公式のリークで新聞に書かせたという感じもするわ。

そんな臭いがするな。青色紙コップは朝日に(10/6)、プラ容器は毎日に(11/11)、目撃証言は読売に(12/7)スクープを書かせた。
他紙が追いかけたのは青色紙コップだけやったが、それも信憑性にケチがついた。
写真がない

それはそうと、青色紙コップは、科捜研のときだけ青かったのが写真からわかったけど、プラ容器は写真がないわね。

そこなんや。本来なら証拠品は要所要所で写真を撮ってあるはずなのに存在しないことを弁護団も追及して、裁判所もこういう認定をしたんや。

あるべき写真がないのに、容認しちゃったのね。青色紙コップは「青かった」のが科捜研のときだけなのが写真から判明したから疑惑が深まったのに。
プラ容器も、たとえば科捜研のときだけ側面に「白アリ薬剤」が書かれてないとか、写真から何かわかったかもしれないわ。

ほんまやで。仮に科捜研がプラ容器を捏造したんやとしたら、側面に「白アリ薬剤」なんて書いてある容器を使うはずないしな。
なんでそんなものが捨てずに残っているのかという話になる。ほかの容器を用意していたはずや。

なのに、なにかの手違いで白アリ薬剤容器が証拠として使われてしまった……。
判決文と回想記──ウソはどっちだ

科捜研の鑑定についてもう一つ気になるのがこれや。上でも出た、林家の家宅捜索の場面やが──。
「採取したブツの鑑定は、どこでやるんですか」
「科警研でするつもりです。緊急で持ち込む予定ですよ」
と答えると、
「服藤さん、和歌山の科捜研にチャンスをくれませんか。最初の検査の汚名返上をしたいんですよ。頼みます」
と、頭を下げられたから困った。(略)鑑定の段取りはすでに組まれていた。(略)仕方なく、
「わかりました。明日までに結果を出してください。資料は、別途採取して下さい」
と伝えた。/服藤(はらふじ)恵三「警視庁 科学捜査官」pp96-97

青色紙コップの記事でも引用した場面だけど、よく読むと、押収物の鑑定はもともと科捜研はやる予定はなかったのね。

そういうことや。科警研という「上位互換」がいるんやから科捜研の仕事はないわな。

判決文にはそんなこと書いてなくて、科捜研はもともと鑑定に参加する予定だったというふうに書いてあるわ。

どっちかがウソを書いているで。

うーん……自分の回想記にわざわざ作り話を書く?

考えにくいな。
〝横入り〟してきた科捜研

そうよねぇ。服藤氏の記述が事実だとして、科捜研が予定外に科警研の前に〝横入り〟してきた。で、プラ容器からヒ素を「発見」した。

「発見」した。

ていうかこれ、科警研から見れば科捜研ってすごく邪魔じゃない? 自分たちより先に証拠を調べるって。しかも格下よ?

せやな。2021年出版の本やから23年前の話やが、服藤氏にとっても記憶に残る出来事やったんやろな。

それにこれ、8月6日の青色紙コップの鑑定のときも状況は同じだった──と類推できない?

できると思うで。科警研がいるから科捜研の出番はないのに、「汚名返上」という手前勝手な理由で科警研の前に横入りしてきた。

で、科捜研が「発見」した。

科捜研が「発見」した。
指紋は判別不能なものだった

指紋や。

このシンク下プラ容器については、指紋が付いてない、そこもおかしいとインターネットで言われているわ。

指紋は付いてはいたが判別不能なものだった、が正しいな。

判別不能だったけどなんらかの指紋が残っていた……ということは、眞須美さんが証拠隠滅のために容器を拭ったり洗ったりはしていないってことよね?

そういうことや。しかし2017浅見決定は、プラ容器の中が「洗浄されるなどした」と認定してんねん。

本当だわ! 洗浄したら判別不能なレベルの指紋であっても残るわけないじゃない。

弁護団のプラ容器捏造追及にたいする浅見決定の反論を読むと、浅見決定は確定一審判決の指紋鑑定のとこを引用してないんや。指紋鑑定したことを読み落としたのかもやな。

それとも、洗浄しても指紋はすこしは残るとでも言うのかしら?

浅見健次郎センセに訊いてみたいもんやで。
なぜ捨てなかったのか──コントの域に達した浅見決定

それに、驚くのは浅見決定のここなんだけど、プラ容器が「他のビニール袋と一緒にチャック付きビニール袋に入った状態」だったということは「他の入れ物に紛らわせて目立たないようにして置かれていた」のだから、台所シンク下にあっても「不自然でも不合理でもない」ですって??

らしいで。

ここまでくるともうバカなの!? 「他の入れ物に紛らわせて目立たないように」するぐらいなら捨てるわよね? 眞須美さんがそこまでして捨てなかった理由があるなら言ってみなさいよ!

そもそも説明できないことを無理やり説明しようとして意味不明になるという、もはやコントやな。

真冬にTシャツと短パンの人が外を歩いているのを見て、「寒さに強い人もいるから不自然でも不合理でもない」と言っているようなものじゃない?

ええ喩えや。

寒いのになんであんな服装なんだろう……? とまず思うわよね。

思うな。浅見決定の判断こそが「不自然」かつ「不合理」やで。
屋外で使用されていたプラ容器が台所シンク下に

しかもこのプラ容器、屋外で使われていたものだったと裁判所も認めたのよね?

プラ容器には「砂や植物が付着していた」し、「多数の傷があ」ったからやな。

屋外で使用していたプラ容器を台所のシンク下に置いておくって、自然なのかしら?

不衛生やな。

浅見決定が正しいとすると、眞須美さんはこういう行動をしたことになるのよ。
もともとヒ素が入っていて所持しているとヤバイと認識していた、側面に「白アリ薬剤」とモロにヤバイ文字が書いてある、屋外で使用されていて台所のシンク下に置くには不衛生なプラ容器を、微量のヒ素と判別不能な指紋が残るぐらいに中途半端に洗浄して、チャック付きビニール袋に入れて他の入れ物に紛らわせて目立たないように保管していた。

なるな。

なんで捨てなかったの?

さっぱりわからん。


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