
ねえカレーマン、和歌山カレー事件でカレー鍋にヒ素が混入されたのは、ガレージか夏祭り会場かどっちかなのよね?


そうやで。カレー鍋は、7月25日の朝から午後3時まではガレージ、それ以降は夏祭り会場にあったんやで。

カレー判決は、最高裁判決(3)の「犯行機会」がラスボスだっていう話をしたけど、ガレージではなく、夏祭り会場でヒ素が混入された可能性はないの?

あるで。
「自治会住民が混入した可能性は『ほとんど』ない」

あるの? 本当?

ほんまや。ワイは嘘はいわへん。

どういう可能性なの? ぜひ教えてちょうだい。
林眞須美先生は〝即無罪〟?

ていうか、裁判官自身が、夏祭り会場で混入された可能性も〝ないことはない〟と書いているんや。

裁判官自身が? それ、眞須美さんが即無罪ということよ? そんなこと書くはずないじゃない。

ほんまのことや。確定一審判決の第三章「亜砒酸混入の機会」のまとめを見てみよか。


「自治会住民が混入した可能性もほとんどないと認められる」……。

「ほとんど」ない、つまり「少しはある」という意味や。

え〜? 断言してもいいけどしにくいときに修辞的に使われる程度の意味なんじゃないの?

それがちゃうねん。順を追ってみていくで。第三章では、いつヒ素を混入するタイミングがあったかを4つに分けて検証しているんや。
- 8:30〜12:00 ガレージでカレー調理
- 12:00〜13:00 ガレージで見張り(カラスや猫対策)
- 13:00〜15:00 ガレージで見張り
- 15:00〜18:00 夏祭り会場

眞須美さんが見張りをしたのは❷の12:20から13:00ね。

そうや。

カレー調理に関わった主婦、その他の住民、眞須美さんのお子さんたちも証人に呼びまくって調べた結果、判決は、眞須美さんの見張りの時間しか混入の機会はないと結論した。


うい。

でもカレーマンは、カレー鍋が夏祭り会場に運ばれてからお祭りが始まるまでの❹の時間にも混入する機会は少しはあったと裁判所は判断した、とみている。
夏祭り会場で混入機会は〝まったくなかった〟のか

そういうことや。判決文にそう書いてあるし、そもそも、夏祭り会場で混入する機会がまったくなかったなんて思えるか?

言われてみれば……そうよね。いくら人目があるといっても、特にカレー鍋に注目してる人なんていないでしょうし。

カレーのほかにおでん、ジュース、ビールもあった。催し物も、カラオケ、金魚すくい、スーパーボールすくい、当たり物くじもあったしな。

お祭りだものね。そんな状況なら、エプロンのポケットにヒ素を入れておいて、カレーをよそう時に掴んでふりかけるぐらい出来そうだわ。

なんならワイでもできそうやし、「まったく不可能」とまではふつう思わんやろ。

そうねえ……まあそこを許容したら有罪にできないわけだから、裁判官も必死だったのは想像できるわ。

とまれ判決文では、上記4つの時間帯に加えて、林眞須美先生の前後に一人で見張りをした3人の主婦についても検討していて、そこも含めてすべて、混入機会はなかったと結論しているんや。
- 午前中……「亜批酸が混入されたことはないと認めることができる」
- 林眞須美先生の前の人(A)の見張りの時……「亜批酸を混入したとは考えにくい」
- 林眞須美先生の次の人(B)の見張りの時……「亜批酸を混入したとは考えにくい」
- 林眞須美先生の次の人(C)の見張りの時……「亜批酸を混入したとは考えにくい」
- 夏祭り会場での不審人物……「亜批酸を混入した可能性はないに等しい」
- 夏祭り会場での自治会住民……「混入した可能性もほとんどない」

「ないと認めることができる」「考えにくい」「可能性はないに等しい」「可能性もほとんどない」──。❻の「ほとんど」だけやっぱり弱いわね。

こんな大事なところで「ほとんど」なんていう副詞、付けたいわけないやろ。他のと同じレベルの否定の表現にしたかったはずや。
事件直後の新聞は「直前」の混入

❶❷❸❹は分かるわ。だって、カレーを食べる5時間以上も前に混入して放置なんてそれこそ「考えにくい」わよ。

そもそも事件直後の新聞はみんな「直前」の混入と書いていたんやで。その見方はヒ素でもシアンでも変わらんやろ。


そう考えるのが自然よね。で、❺もいいと思う。第三章のまとめにもあるように、不審人物がいれば誰かが警察に話したはずよ。

ワイも異議なしや。問題は❻の自治会住民が混入した可能性や。ちなみに林眞須美先生は、夏祭り会場には氷とご飯を届けてすぐ帰ってはる。せやから、「夏祭り会場で混入=犯人は林眞須美以外」は争いがないで。

自治会住民が混入した可能性は「ほとんどない」とする根拠が、第三章のまとめの②と④ね。
②ほとんどの時間帯についてカレー鍋付近に複数の住民がいたので、アルミホイルの蓋を取ってヒ素を混入する行為はリスクが高すぎる
④ヒ素混入に使われた紙コップが入っていたゴミ袋は、主婦が午後3時ごろガレージから会場に移したときに口をしばって、それ以降はゴミを入れることができなかったのだから、紙コップがゴミ袋に入れられたのはガレージである

ふむふむ。

②はさっき言った通りよ。リスクがないとは言わないけど、バレずに入れるのがそんなに難しいとは思えないわ。

17:00からカレー鍋を再点火してかき混ぜているから、アルミホイルの問題もクリアしているで。

④はどうかしら。

ゴミ袋の中身を見てみよか。写真つきや。
突然でてきた「紙コップが入っていたゴミ袋の移動」



このゴミでどれぐらいの嵩(かさ)になったのか知りたいわね。

満杯って感じではなさそうやな。4分の3ぐらいか。それにこの表記やと、
静岡は,ゴミ袋の両端を持ってしばる形で口を締めている
ヨコだけ1回しばったのか、タテとヨコと2回しばったのかが分からんな。

これをふつうに解釈すれば1回でしょうけど、それなら両脇に隙間ができるわよね。


できるな。だれでも経験することや。紙コップぐらい入れられるわな。

その中の「野菜屑在中」というビニール袋の口も、どんな風にしばってあったのか分からないけど、ゴミ袋の中で一番上にあれば、ゆるかったり、口をぐるぐる巻いただけだったら、口が開いたり隙間ができたりで、紙コップを握りつぶしてビニール袋の中にねじ込むことは簡単じゃない?

実際、事件翌日の7/26鑑識課の写真をみると、紙コップはクシャクシャやしな。


それに、こういう料理の共同作業なんかではよくあるけど、最後までゴミは出るものだから、勝手を知った主婦ほどゴミの袋の口は固くしばらないと思うわ。追加でゴミが出たときにほどく手間を考えちゃうから。

それもあるし、こんな重要な話をなんの検討も加えずに挿入するのは違和感があるで。通常その章のまとめに書くのは、章で具体的に検討したことをコンパクトにした内容や。でもこのゴミ袋の移動は、第三章ではここにひとこと書いてあるだけや。


第三章のまとめを書いていて、夏祭り会場で混入できない根拠が弱いと気づいた判事さんが、補強のためにあわてて挿入した……?

そんな感じに思えてならんな。


こう見てくると、夏祭り会場で混入された可能性を完全に否定するのは苦しいわね。

その結果としての「ほとんど」とみるのが自然やろな。単なる修辞的な意味とは明らかに違うと思うで。

……ていうか、そもそも例の捏造の疑いが濃厚な青色紙コップだけどね。

そうやで。本来なら考えるだけ時間の無駄や。まあその話はここでは措くけどな。
裁判官の自白

その意味で裁判官は正直だったとも言えるわね。「ほとんど」を付けることによって「夏祭り会場で混入された可能性は完全には否定できません……」と自白したようなものだもの。

つまり無罪や。
夏祭り会場を否定した判断の背景にあったもの

しかしこの一審の判決文を書いた裁判官の脳内には、べつの記事で書いたヒ素の希少性もあったと思われるな。

ヒ素の希少性? ああ……夏祭り会場で混入ということは、眞須美さん以外の住民の犯行ということだから、林家と同じ組成のヒ素をだれかが持っていたことになると。

そうや。確定一審の段階では、1983年頃の中国の同じ工場で同じ時期に作られたヒ素という話やった。

そんな希少なヒ素が1998年の和歌山市の小さな地区に複数あったとは考えられない、という理屈ね。

その前提なら、判事の判断は分からんでもない。でもそれは2017浅見決定でくつがえった。林家ヒ素の希少性は大幅に後退したで。

そうよ。同じヒ素をほかの住民が持っていてもおかしくないとなれば、夏祭り会場で混入というアナザーストーリーのリアリティが増すわ。

なんやけど、2017浅見決定は認めへんかった。

これが再審の壁ってことかしら……。
祭り開始15分前にだれもいなかった──和歌山市幹部の証言by読売

あとこれも見逃せないんやが、夏祭りが始まる15分ほど前に、会場には人がほとんどいなかったという証言があるんや。

あ、ツイッターXで見たことあるかも。和歌山市の幹部の話?

そうや。読売の8月2日の記事や。あとでまとめるからここはチラ見でええで。
和歌山市園部地区の夏祭りで四人が死亡した青酸カレー事任で、祭りが始まる直前に会場を訪れた市幹部ら二人が「テント内のカレーなべのあたりでは、だれも見なかった」と和歌山県警捜査本部(和歌山東署)に証言していることが一日、わかった。祭り開始の先月二十五日午後六時より十五分ほど前で、カレーに対する監視の目が離れた「空白の時間」の可能性もあり、捜査本部は当時、見張り役を割り当てられた住民からも詳細に事情聴取を進めている。
証言によると、市幹部らは事件当日、園部地区周辺で開かれた四か所の夏祭り会場に車であいさつに回っており、三番日の同地区には午後五時四十五分ごろに到着。会場のテント前で出迎えた園部第十四自治会長の谷中孝寿さん(64)、同副会長の田中孝昭さん(53)(いずれも死亡)としばらく雑談を交わしたという。
捜査本部の事情聴取に対し、市幹部らは「仕事上、地域の行事に協力してくれている人が目に留まったら、相手が自治会の役員でなくても必ずあいさつするはず。しかし、会長ら二人としか、あいさつはしなかった」などと証言している。
捜査本部はこれまで、カレーを作った主婦や住民の目撃証言などを総合的に判断して、カレーのなべに青酸化合物が混入された時間帯は午後五時半から六時までの「三十分間」との見方を強め、この間に人目に触れずに犯行が可能な時間帯がなかったか、集中的に調べていた。
住民らの中には「なべのそばには常にだれかがいた」との証言もある。(1998年8月2日 読売新聞大阪朝刊)

「テント内のカレーなべのあたりでは、だれも見なかった」

「仕事上、地域の行事に協力してくれている人が目に留まったら、相手が自治会の役員でなくても必ずあいさつするはず。しかし、会長ら二人としか、あいさつはしなかった」

「カレーのなべに青酸化合物が混入された時間帯は午後五時半から六時までの「三十分間」との見方を強め」ている。

強めているで。
ヒ素を入れるチャンスは〝ありまくり〟だった?

これが事実なら、カレー鍋にヒ素を入れるチャンスなんて〝ありまくり〟じゃないの?

そうやし、この記事の8月2日という日付けが重要なんや。

8/2……あっ、科警研がヒ素を検出した日だわ。記事はそれより前ということね。

そうや。科警研がヒ素を検出した8/2以降、泉○典の「林家ヒ素詐欺」の自白を経て、警察とマスコミは林夫妻宅に疑いの目をむけていく。この読売記事はそのバイアスがかかってないから信憑性が高いんや。

市の職員さんが職務で出向いたときの話だから緊張感もあるでしょうしね。
盛り上がっていなかった新興住宅地の夏祭り

それに新興住宅地やから、そもそも地域の行事なんて面倒やなと思っていた住民は少なくなかったはずや。祭り開始直前でも閑散としていたのは納得やで。

だからカレーを夏祭り会場で食べずに家に持ち帰った人も多かったわけだしね。それが被害を拡大させる一因になってしまったのだけど。
13:00すぎの味見

味見や。

眞須美さんの見張りが終わった13:00以降に、住民がカレー鍋を味見して症状が出なかったのよね。証明されれば眞須美さんは一発で無罪よ。

一発やで。

でも、味見の話も「犯行機会」のカテゴリでいいの?

ヒ素をいつ混入できるかという話からは逸れるが、ガレージでの混入を否定するわけやから、広くみるとココでええやろ。
テレビ、朝日、産経が報じる13:00以降の味見

まずは有名なこの映像を出しておかんとな。

女の子は午後1時から2時半に舐めたと。眞須美さんの見張りのあとということは確かね。でもこれだと、東カレー鍋か西カレー鍋かが分からないわ。


せやな。そこでもう少し詳しいのが朝日新聞のこの記事や。


「それぞれを味見した」の「それぞれ」って、カレーの「大なべ二つ」のことよね。じゃあ東鍋も西鍋も両方味見したということだわ。ということは……

無罪や。

無罪よ。


さらに産経の記事もあるで。


「5人のうち子供を含む4人は正午過ぎにヒ素が混入された大なべのカレーを味見し」たですって? 午後1時までは眞須美さんが見張りをしていたと裁判所も認定しているのよ?

だから、その「正午過ぎ」というのは「午後1時過ぎ」いうことやろな。昼ごはんのあとや。

それなら、上の動画の女の子が味見したときと時間が合うわ。ようするに、眞須美さんが帰ったあと、ガレージに大人も子供も来て、味見とかしながらガヤガヤしていたということのようね。
判決文の決定的な矛盾

そしてここで確定一審判決のおどろくべき矛盾が明らかになるで。

え? なになに、何があったの?

これや。第三章「亜砒酸混入の機会」の第3「午後1時ころから夏祭りが始まるころまでの状況」のなかの文章やで。


午後1時以降の見張りのときに「カレー鍋の蓋が開けられたことはなく」? なに言ってるの?? テレビは「1時から2時半」、朝日は「一時すぎ」、産経は「正午過ぎ(おそらく1時すぎ)」に味見をしたと報じているじゃない。

報じているな。

園部のみなさんは、鍋のふたを取らずに中身を味見できる特技をお持ちなのかしら?

それめっちゃ難しいで。

だったらまたまたインチキじゃない! 東鍋も西鍋も味見したとバッチリ報道されているのになんでしてないことになっているのよ。弁護団も裁判官もなんで指摘しないの?

その時間帯は不審者もいなかったしヒ素が混入された形跡もなかった、という意味で「開けられたことはなく」と書いたんやろうけど、味見があったことまで隠してしまって藪蛇になったな。

いい気味だわ! そもそも検察は味見のけんは隠したかったんでしょう。あるいは、これも警察が検察に送っていない可能性もあるわね。

検察側の隠蔽の意図はあり得るな。というのも、産経記事に「別の一人は夏祭り会場の空き地で(略)午後五時過ぎに口にしていた」とあるが、これについては判決文に書いてあるんや。


自分から舐めたのに味がしなかったというのも意味がわからないけど、夕方の味見はちゃんと書いてあるのね。ということは、午後2時ごろの味見は本当に隠したかったのかしら?

あり得るな。それか本当に警察が送ってないかや。
再審請求の新証拠になるか?

再審請求でこれを新証拠として提出すれば無罪にならない?

もちろん弁護団も検討はしていると思うで。ただ、判決は、ヒ素がよく溶解していない場合は症状が出るのに10時間かかることもあると認定したから、夜のカレーを食べてない人の証言が必要になるんや。


なるほど。夜のカレーを食べてヒ素中毒になった人だと、昼のカレーと夜のカレーのどっちが原因か分からないものね。

判決文をみる限り、午後1時から3時までは8人の女性がガレージにいたことが確認できるで。

この時間にガレージで東カレー鍋を味見をして、かつ夜は食べてない人物を特定せなあかん。

一人ぐらいはいそうじゃない?

確定一審判決の資料に、夜にカレーを食べてヒ素中毒になった63人全員が載っているんやが、そこに名前がない、つまり夜のカレーを食べてないのは静岡、島根、茨城b子、目黒の4人や。

じゃあ、その4人のうち昼のガレージで東カレー鍋の味見をした人を特定できれば無罪ってことね。

そうや。それにはこの主婦たちの調書を全部読まなあかん。警察は味見のことも聞き取っているはずや。

ということは……再審請求の審理で、証拠開示を申請して、検察側に証拠を出すよう裁判官に指示してもらわないといけない。

そういうことや。ここで全国の再審弁護団が頭をなやます〝証拠開示の壁〟に直面するんや。実質的に大正時代から変わってない刑事訴訟法の再審制度の改正が心の底から望まれるで。
「直前の混入」を裏づける状況証拠3選

ねえカレーマン、ヒ素は夏祭り会場で混入された可能性が十分あるのはわかったんだけど、もう一歩ふみこんで、「直前の混入」を積極的に裏づけるものってないのかしら?

あるで。

あるの? 本当?

3つあるで。

3つも? それを早く教えてよ。

簡単な話や。カレーを食べた人たちは、①カレーの味②「1皿全部」を食べた人の症状③嘔吐までの時間、この3つがバラバラなんや。

その3つがバラバラ? ということは……。

ということは……。

バラバラ殺人事件……。

はあ。

カレーがよく混ざってなかった……?

正解。

あ、そうか、よく混ざってなかったということは、食べる前に混入した可能性が大きいということね?

そういうことや。一つひとつ見ていくで。
カレーの味

食べた人によってカレーの味が違ったの?

せやで。まずはこれやな。


「カレーは食べたときから味が変だった」「酸っぱいカレーだなと思った」「味が薄くて子供用に作ったのかなと思った」「何やこの味」……。よっぽどヘンな味のカレーだったのね。

一方で、この動画の3:34でおばちゃんは「味はええんやで」と言うてはる。


本当ね。カレーの味がヘンだった人と普通だった人に分かれている。

しかし判決文は、カレーは1時間ほどかき混ぜられてまんべんなく行き渡っていたと書いているんや。


1時間も!? そんなにかき混ぜてヒ素がまんべんなく行き渡っていたら、なんでカレーの味がヘンと普通に分かれたの? いくらカレーは粘度があるといっても。

そこの説明がつかへん。

判決文には、カレーの味についてはなんて書いてあるの?

なんも書いてへん。

えっ、なにも書いてないの? 毒入りカレーなのに?

なんぼ探してもカレーの味のことは一文字もないで。

じゃあこれもインチキだわ! 明らかに隠蔽よ。検察も裁判官も、その矛盾を隠すためにカレーの味のことを完全スルーしたんじゃないの? そう疑われても仕方がないわ。

せやな。まあ検察も証拠を出さなかったし、弁護団も指摘しそびれたんちゃうか。

これはもう、ヒ素は食べる直前、早くても30分ぐらい前に混入されたからよく混ざってなかったとしか考えられないじゃない。

ほんまやな。
「1皿全部」を食べた人の症状

次は「1皿全部」食べた人の症状のちがいね。重症の人と軽症の人に分かれたの?

そうや。確定一審判決文の資料に、生存者63人の症状がこんなふうに掲載されててな。


一人ひとり、どれぐらい食べてどういう症状になったかまで書いてあるわ。

その63人のを全部読んでみたら、「1皿全部」食べた人は、少なくとも15人いたんや。症状の内訳はこうや。
- 重症5人
- 中等症8人
- 軽症2人

やっぱりバラバラなのね。亡くなった4人はどうだったの?

4人も1皿全部を食べているで。


じゃあ4人も入れればこうね。
- 死亡4人
- 重症5人
- 中等症8人
- 軽症2人
1皿全部を食べて「死亡」と「軽症」に分かれるなんて……。

それに新聞記事によると、食べたのに症状が出なかった人も何人かいたんや。
また、捜査本部は同日、カレーを食べて症状が出なかった住民数人の尿を科警研で鑑定した結果、いずれもヒ素は検出されなかったと発表した。(1998年8月14日 中日新聞社会面)

食べた量が少なかったのかもしれないけど、症状がなかった人が「数人」いたというのは驚きね。「まんべんなく」混ざっていてこんなにバラバラ……。

ちなみにカレー鍋は内径31.4cm、深さ27.5cmの寸胴鍋や。


全然大きくないわね。写真にもある木しゃもじで混ぜたというから、「まんべんなく」混ざるのに1時間もかかるとはとても思えないわ。

5分で十分やろ。
嘔吐までの時間

夏祭り開始の30分ぐらい前に混入したのが真相とみられるのに5時間も前に混入してお祭りの1時間前からかき混ぜていたという認定をしたばっかりに浮かび上がる矛盾の3つめは、「嘔吐までの時間」ね。

まずは判決文のここやな。


まんべんなく混ざっていたことに加えて、よく溶解もしていたと認定したのね。だから嘔吐も早かったと。

よく噛んで食べると消化によいのと同じ理屈や。

よく溶解していたから「極めて早く発症し」たというけど、生存者63人はみんな「極めて早く」発症したの?

「1皿全部」と同じく、これもバラバラや。事件翌日の読売のこの記事を読めばわかるで。ヒ素が検出されたのは8/2やからこの時点では毒は青酸化合物やが。
あとでまとめるから全部読む必要はないで。
和歌山市園部地区の夏祭りのカレーライスに混入した青酸化合物により四人が中毒死した事件で、死者を含む患者がカレーを食べてから発症するまでの時間に五分から二時間と大きな幅があることが二十七日、和歌山県捜査本部(和歌山東署)の調べで分かった。青酸化合物の粉末が十分に溶けきらないまま配られ、摂取量に違いがあったためと見られ、患者が食べたカレーのトレーからは分解されずに残った青酸化合物の結晶がすでに検出されている。カレーは二十五日午後六時から配られているが、捜査本部は、三十分に満たない直前に青酸化合物が大なべの一つに混入されたと判断、この時間帯に現場にいた人物の特定を急いでいる。この日、さらに一人が発症を届け、患者は計六十七人になった。この日朝でなお四十人前後が入院、重症者はいない、という。
(2、14、15面に関連記事)
青酸化合物による中毒は摂取直後に発症するのが特徴だが、捜査本部が死者を含む前日までの患者六十六人の発症時間を調べた結果、食べた直後に症状を訴えた住民がいたのに対し、食べてから二時間後、自宅で発症した住民もいて大きな幅があった。
食事量が少なくても早く発症したり、逆に多く食べても発症が遅かったりの場合もあった。捜査本部はカレー配布の直前に青酸化合物が混入されたため、十分にカレーに溶けず、皿によって混入量に大きな差が出たとみている。混入時間は配布の数分から長くても三十分前までの間と判断している。
このため大なべに入ったカレーの上部に多くの青酸化合物があり、早い段階で食べた患者の症状が重かったとみられる。死亡した地元自治会長の無職谷中孝寿さん(64)と、副会長の金物店経営田中孝昭さん(53)は配られた最初のカレーを食べたという。
患者の吐しゃ物の化学分析で青酸化合物の結晶が分解されずに残っていたことも確認。粉末状の青酸化合物がカレーに混入されたものの、摂取までの時間が短かったために分解しきれなかったとみている。
また、振る舞われる直前に、患者の出た大なべのカレーを味見した主婦は「異常はなかった」と証言したことからも、ごく短時間のうちに青酸化合物が混入された可能性が高い。しかし、この時間帯に現場周辺で不審人物の目撃証言はなく、捜査本部は犯人は住民と顔見知りで怪しまれず、大なべに近付けたとみている。
捜査本部は同日朝の記者会見で、青酸化合物の有無を調べた検体は計百点で、このうち二十三点から化合物を検出したと発表した。患者の出しゃ物十八点、亡くなった谷中さんの心臓血などで、カレーの中から検出されたのはトレーに残っていた一点だけだった。
混入されたとみられる大なべは同本部が調べるまでに水で洗浄された形跡があり、化合物も検出されなかった。洗った水が流されたとみられる用水路も調べたが、反応は出なかった。
◆粉末にして投入か
東京薬科大学薬学部の渡部烈教授(毒性学)の話「一般的に工業用に使われる青酸化合物は粒状になっており、カレーのような粘度の高いものに投入すると溶けにくいので、粉末にして入れた可能性が高い。水だと瞬時に溶けて毒性は均一になるが、カレーだと時間をかけてよくかき混ぜないと溶けない。青酸化合物は致死量に個人差があるが、毒性の濃淡と相まって、患者の症状時間に差が出たのかもしれない」(1998年7月27日読売新聞 大阪夕刊)

カレーを食べてから発症するまでの時間に五分から二時間と大きな幅がある

粉末が十分に溶けきらないまま配られ、摂取量に違いがあったためと見られ

この日、さらに一人が発症を届け(つまり十数時間たって発症のケースも)

分解されずに(溶けずに)残った青酸化合物の結晶がすでに検出されている

症状が出るまでの時間がこれだけバラバラだったら、こういう解釈になるのが自然よね。よく溶解してないし、分布も不均一だったと。

せやな。事件直後の見立ては当たるもんやで。上でも引用したが、そもそも事件直後の報道はみんな「直前混入」やった。


でも眞須美さんを犯人にするためには「お昼のガレージで混入」でなければならない。

そうや。

となると、鍋のなかに5時間入っていて、かき混ぜる時間も十分にあったとするしかない。だから、まんべんなく分布していたしよく溶解していたとするしかない。

うい。

でもそうすると、カレーの味、1皿全部を食べた人の症状、嘔吐までの時間、みんなバラバラだから説明がつかない。

つかへんで。

よくこれで有罪にできたと思わざるを得ないわ。

ほんまやで。


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