
ねえカレーマン、林眞須美さんが無罪になる可能性はあるの? 再審請求はいま、第三次再審の和歌山地裁に係属しているけど。


可能性はないことはないと思うで。難しいのは事実やけど。

やっぱり難しいのね。どうすれば無罪になるのかしら?
異例にも事実認定に踏みこんだ最高裁

それには2009年の最高裁の判決を見よか。これが確定審のファイナルアンサーであり、同時に再審で崩す目標になるんや。


最高裁は下級審の判決のチェックが仕事やが、カレー事件では異例なことに、事実認定に踏み込んだんや。よっぽど思い入れがあった(?)んかもな。

(1)がヒ素の異同識別、(2)が林眞須美さんの頭髪に付いていたとされるヒ素、(3)が犯行機会、(4)が目撃証言、(5)が動機、(6)が「くず湯事件」その他の保険金詐欺事件ね。

このうち上の4つが「主な証拠」や。
主要4証拠をペーパー試験に見立てると配点は?

「主な証拠4つ」をペーパー試験の設問に見立てると、配点はどうなるかしら?

ええ視点やな。ワイが見るところ、こんな感じや。
- (1)異同識別──35点
- (2)頭髪ヒ素──12点
- (3)犯行機会──35点
- (4)目撃証言──18点

異同識別と犯行機会がならんで高配点ね。

異同識別と頭髪ヒ素が「科学的な証拠」のセットや。犯行機会と目撃証言もセットで、目撃証言は犯行機会(お昼のガレージ)を補強しているで。

この記事でも詳しく説明しているわね。「再審開始」をゲットするには、特に異同識別と犯行機会を攻略しなきゃいけないってことね。
「異同識別」は〝扇の要〟といわれるが

あくまで素人の判断だけど、最高裁判決って、カレー事件はよく「直接証拠がない」と言われる、まさにそんな印象だわ。どれもこれも〝いまいち〟よね。
かろうじて証拠らしいのは(1)の異同識別ぐらいかしら。

せやな。この記事で解説したやつやな。証拠の「扇の要」とされているで。


ヒ素に含まれる微量元素のアンチモン、スズ、ビスマス、モリブデンの組成が酷似しているってやつよね。
上の最高裁判決では「組成上の特徴を同じくする」と表現されているわ。
でも、その「同一性」の証拠価値を支えるのは「希少性」で、「希少性」を担保していた「製造段階の同一性」は否定された。だからその同一性にどれだけ意味があるのか分からない。

そういうことや。
「頭髪のヒ素」を特定の事件だけに結びつける恣意性

(2)の「頭髪のヒ素」にしたって、ヒ素を使って保険金詐欺をやっていたんだから、髪の毛に付着していても不思議はないんじゃない? カレー事件だけに結びつけるのは恣意的だと思うわ。

せやな。それに、「頭髪のヒ素」は、一審判決ではほんのちょっとしか登場しないんや。目次にも書いてへん「補欠ベンチ」だったんや。


それなのに最高裁判決の2番目の理由になってるの?

異同識別のほかに、もう一つぐらい「科学的」な証拠がほしいと最高裁は思ったんやろな。で、ショボイのしかない中から選んだんちゃうか。

「大出世」したってことね。

頭髪ヒ素の鑑定は、河合潤博士も著書の「鑑定不正」と「裁判官の不正」で大々的に批判するように、ウソとごまかしのオンパレードやで。この記事で詳しく書いているで。

私も聞いたことあるわ。眞須美さんの頭髪に付着していたのは、ヒ素(As)ではなく鉛(なまり、Pb)だったというやつね?

その通りや。

「頭髪ヒ素」で崩すべき数字はこの3つね。
- 48ミリ(地点のヒ素)
- 51,52ミリ(地点のヒ素)
- 0.090マイクログラム(のヒ素)
このうち48ミリは「鉛(なまり)」で説明できる。51,52㍉の鑑定は、失敗だった可能性が高いことが、鑑定人を訴えた民事裁判で明らかになった。

そういうことや。「48ミリ」と「51,52ミリ」の崩壊は、河合潤博士の怒涛の追及によって明らかになった。第三次再審で認められる公算が大やで。「0.090マイクログラム」も、民事裁判で否定されたんや。
西鍋の蓋をあけて東鍋に入れた??

それと(4)の目撃証言。ドキュメント映画「マミー」にもあったわ。眞須美さんがカレー鍋の蓋をあけていたのを、斜向かいのお宅の女子高校生が目撃したというけど、ヒ素が入っていないほうの「西カレー鍋」よね。「西鍋」の蓋をあけて「東鍋」にヒ素を入れたって、どういうこと??


意味わからんわな。まあこの記事でくわしく書いたように、女子高校生が「2階から見えた」というのはウソということが明らかになっているで。他にも、女子高校生の言動があまりにも不自然でビビるほどや。
ようするに「犯行機会」という〝消去法〟なのか?

(5)の動機は未解明だし、(6)の保険金詐欺は過去の話だし。
こう見ていくと、有罪にできる根拠って(4)の「犯行機会」しかないんじゃない? この記事でくわしく取り上げているけど。
裁判所は、ヒ素を混入する機会を「12:20から13:00のガレージ」に限定した。その時間にカレー鍋の見張りをしていたのは林眞須美だ。だから「林眞須美以外ありえない」と。

ご明察や。確定一審判決の総まとめ「被告人の犯人性の検討」を読めばわかるで。「被告人以外〜〜ない」という表現はめっちゃ多いで。チラ見でええで。


被告人以外見当たらなかった……被告人以外考えられない……被告人以外は非常識な想定にすぎない……。
なんだか、証拠が不十分なのは承知の上だ、でも無罪にすると色々まずいからこれで勘弁してくれ、とでも言っているみたい。

せやな。確定審のファイナルアンサーがこれやからな。こんなんでよく有罪死刑にできたなと思う法曹人は少なくないと思うで。


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