
ねえカレーマン、カレー事件の有罪の最大の根拠は、ヒ素の「同一性」なの? 林家のヒ素とカレーのヒ素が「同一」だったと。事件の年のこの記事を見たことあるわ。


ああ、それな。確定一審の裁判でも、ヒ素の同一性は最大の争点とされてきたな。


まあそれはそうなんやが──。

なによ、カレーマンはそう思ってないの?

いや、「あれ」と「それ」が「同一」とか言われても、それが珍しくないものなら証拠価値ないやろ?

ああ……たとえば、現場の血痕と容疑者の血液型がA型で「同一」であっても、A型の人なんていくらでいるから、犯人特定にはあまり意味がないってことね?
ヒ素のその「同一性」は希少なのか?

そういうことや。「同一性」という証拠は「希少性」があって初めて成立するやろ。

たしかに、指紋やDNA型ならその人固有のものだから「激レア」だけど、ヒ素に含まれる「微量元素の組成」といわれても、希少なのかなんて分からないわね。

せやろ。で、カレー裁判は第一次再審で、有罪の根拠になっていたヒ素の「希少性」が崩れたんや。

えっ、そうなの? じゃあ、林家ヒ素とカレーヒ素が同一であっても意味ないってことになったの?

本来はそうやで。

じゃあ無罪になってもおかしくないじゃない。

「で、で、でも同じA型やないか、怪しいやないか」と叫びつづけているのがいまの裁判の認定やで。

なにそれ? ヘンな裁判官ね。
「希少性」が崩れても「同一性」を叫びつづける浅見決定

2017浅見決定の総合評価(結論)を見よか。赤傍線のとこやで。


「微量元素の構成が酷似」……「組成上の特徴を同じくする」……「組成上の特徴が一致」……「組成上の特徴が合致」……。同じことが6回も書いてあるわ。しつこくない?

せやろ。弁護側の新証拠によって、裁判官は、検察側のいうヒ素の「希少性」を否定せざるを得なくなった(後述)。
でも有罪はキープしたい。そこで、同じA型じゃないか、引きつづき怪しいじゃないか、と裁判官が訴えているところや。

「同一性」の証拠価値を支えていたものが否定されたのに「同一性」を言い続ける……。わがままな子供みたいね。
バケツのあいた穴から

それに、一般社会でヒ素が「希少」だということも、しつこいほどくり返しているんや。河合潤博士が「鑑定不正」p46で書いてはるで。


ほんとだわ。なんだか、バケツに穴があいて水が漏れるのをあわてて防いでいるみたい。


ほんまにそんな感じやで。希少性が崩れたのに、「いやそれでもヒ素なんて希少なものだ」と一般論だけで主張しているんや。希少性が有罪の生命線ということがよくわかるで。
裁判官によっては、ここで無罪をだす人もいたはずやで。

で、検察側のヒ素の「同一性」と「希少性」って、どんなものだったの?
「製造段階において同一」とアバウトにいわれても




左のスペクトルは、どうやって分析したの?

これは有名なSPring-8の分析や。ヒ素でも砂糖でも小麦粉でもええんやけど、蛍光X線を照射すると、その物質を構成する元素がわかって、こういうグラフも出してくれるんや。

AからGまでそっくりなグラフね。これなら「同一」とされたのもわかるわ。

この他に科警研と他の学者と計3つの鑑定があるんやけど、判決文を読むと、中井鑑定をいちばん重視していたのが分かるんや。
3つの鑑定の結論は、A〜Gが「製造段階において同一である、すなわち、同一工場で、同一原料鉱石を用いて、同一工程で、同一時期に製造された」ということやけど、これも中井鑑定の文章やしな。まあ「SPring-8様」の権威にすがったのもあるやろな。

「製造段階において同一」ってどういうこと? みんな同じ場所で製造されたってこと?

そういうことや。ヒ素に先天的に含まれる4つの微量元素の組成を見て、アンチモンとスズが同じぐらいの量でビスマスがその数倍あって、かつモリブデンも含む、というのが酷似していると判断したんや。
これは同じ工場で同じ鉱物を使って同じ時期に作ったということなのだ。だからこんなにそっくりなのだ、ということや。
上のスペクトルを簡単に描けば、こういうグラフや。


ず、ずいぶんテキトーなグラフだけど、ようするにこういう分析結果なのね。
アンチモンとスズが同じぐらいの量でビスマスがその数倍あって、かつモリブデンも含む。
という生まれつきの特徴を比較したと。で、この組成って珍しいの?

検察側によると、和歌山や大阪のヒ素を61こ集めてきて分析して比較したところ、同じ組成のヒ素はなかったってことや。

じゃあ珍しいのね。希少性があるんだから、証拠価値は高いんじゃないの?

ところがやな。

ところが?
「別の日につくったヒ素でも同じなんちゃうの?」

「同じ工場で同じ鉱石を使って同じ時期に製造された」「製造段階において同一」とアバウトにいわれても、別の日に作ったヒ素でも同じ組成になるんちゃうの? という疑問がわくやろ。

ああ……そうか。製造日が1週間ぐらい違っても同じ組成になるんだったら、珍しくないから証拠価値は低くなるわね。


そうや。だからそこをカバーするために、検察と中井教授は「別の日に作ったヒ素は組成が違う」という鑑定を作ったんや。そうして希少性をギリギリまで高めようとした。裁判が始まって半年もたってからのことや。

なんだかテキトーな展開ね。どんな鑑定だったの?

結論からいうと、河合潤博士がまとめたこの表や。まず検察は、愛媛県の民間の製錬工場から、製造日ごとに5個ずつ、計25個のヒ素をもらってきたんや。
この25個を中井教授がSPring-8で分析したんや。
このヒ素はモリブデン、スズ、ビスマスは含まれてなかったから、アンチモン(Sb)濃度(微量元素の組成)だけを分析しているで。


2月3日から3月19日まで5個ずつに分けてあるわ。

で、検察と中井教授の主張どおりなら、同じ製造日のヒ素は5個ともアンチモン濃度が同じはずやけど、けっこうバラバラやろ。

バラバラね。ていうか、2月の3日と22日に同じ120ppmがあるわよ。製造日が20日間も違うのにアンチモン濃度(微量元素の組成)が同じじゃないの。
中井教授の「縦軸トリック」

その通りや。でも中井教授は法廷で、なんでか知らんけど25個とも製造日が違うという勘違いをして、ほら製造日が違ったら組成も違うでしょ? と説明したんや。有名な「縦軸トリック」を使ってな。動画で弁護団が解説してはるで。

ひどいインチキね! ヒ素ごとにアンチモン濃度が違うとウソを言うために、縦軸を操作してアンチモンの量を違うように見せかけたのね。

この鑑定によって、製造日が違ったら組成も違う、つまりA〜Gは同じ日に製造されたから組成がここまで酷似しているのだ、という「希少性」が証明されてしまったんや。

なるほど……「同一性」と、その証拠価値を担保する「希少性」か。
で、それからどうなったの? 第一次再審になって、中井教授のインチキを河合潤博士が見破ってくれたの?
ヒ素鑑定は「証明力が減退した」

そうや。ここで説明してきたことを新証拠として提出した。で、浅見コートも認めざるを得なくなって、こう書いたんや。


すっごく分かりにくい文章だけど、
林家ヒ素と組成が酷似するヒ素が他に存在しない、つまり「製造段階において同一」であるとする点は「相当性を欠く」。よって3つの鑑定の「証明力が減退した」
とハッキリ書いてあるわ。

そういうことや。林家ヒ素と同じ組成のヒ素はよそにもあるということになったんや。

それを受けて、確定審の根幹が揺らいだとあせった裁判官が、でもスペクトルは酷似しているぞ! ヒ素は希少なんだぞ! と何回も叫んだわけね。

まあ確定審の判決が改善されたのは、今のところココだけなんやけどな。しかし大きな一歩やで。

カレーマンも言っていたように、ここで再審開始を出す裁判官もいたかもしれないわね。
実際にヒ素は希少ではなかった⁉︎ 「ドラム缶Q」の発見

それにしても、上で出てきた、61個のヒ素を分析して林家のヒ素と比較したけど同じ組成のものはなかったというのは大きいわね。

せやな。当時の弁護団も反論が難しかったやろな。

「製造段階が同一」が否定されて、「同じヒ素はよそにもある」になったとはいえ、じゃあどこにあるんだ? 「理屈上ある」というのは分かるが、現実問題、ないじゃないか、と裁判所が言いたくなるのも分からないでもないわ。

まあな。ていうか、同じ組成のヒ素は、科警研が当時、分析していたんや。

えっ、そうなの? 裁判には出ているの?

出てへんねん。検察は自分に不利な証拠は出さんでもええからな。
科警研が分析していたヒ素は「ドラム缶Q」や。

河合潤博士が「鑑定不正」p40から書いてはるで。「Q」も博士の命名やで。

あ、これの「ドラム缶Q」のことだったのね。たしかに、アンチモンとスズが同じぐらいでビスマスがその数倍、モリブデンも含有しているわ。林家のヒ素と同じ組成ね。

そうや。検察側は、和歌山や大阪から61個のヒ素を集めてきて、分析して、林家のヒ素と同じ組成のヒ素はなかった、だから林家のヒ素はめっちゃ希少だ(つまり証拠価値が高い)と結論したのにな。

またまたインチキだわ! そう結論しながら、同じ組成のヒ素があるのを隠していたのね。このドラム缶がどこにあったかは分からないの?

そこまでは分かってへん。第3次再審(2024年2月〜)で明らかになってほしいところや。

このスペクトルはどこにあったの?

中井教授が2005年、科警研が分析したデータを引用して、学会誌に論文を書いたらしい。それを河合潤博士が見つけたんや。「鑑定不正」p47から書いてはるで。

なんだか、斎藤元彦氏が再選された2024兵庫県知事選で、公選法違反なのを気づかずに自分の協力をnoteに書いた女性社長みたいね。

まさにそれやで。
中井教授の「なんちゃって鑑定」

とまれ、2017浅見決定で「製造段階が同一」という希少性が否定されたうえに、国内でも、林家のドラム缶Aのほかにドラム缶Qが出てきて、さらに希少性が低くなったわけね。

そういうことや。しかも、ドラム缶Qの存在が明らかになったことによって、中井鑑定自体が否定される可能性が出てきたんや。

えっ、中井鑑定自体が丸ごと否定される? どういうことなの?

これも河合潤博士が見つけたんやけど、中井教授が2013年にこんな論文を書いてるんや。
数値による厳密な表現をとらず,だれがみてもわかる上記1) 2)のゆるい条件で,事件に関係した亜ヒ酸を特徴付けることができたので,異同識別には十分であると筆者は考える.
もちろんそれができたのは,類似した特徴を与える亜ヒ酸が当時の国内には,他に流通していなかったからである.
学術論文では河合氏が指摘されるように普遍性の点で不十分かもしれないが,鑑定書では「当時日本に流通していた他の亜ヒ酸に同一の特徴をもつものがなければ」十分である.
和歌山毒カレー事件の法科学鑑定における放射光X線分析の役割

「上記1)2)のゆるい条件」って、例の「アンチモンとスズが同じぐらいでビスマスがその数倍、モリブデンも含有」のこと?

そうや。中井教授によると、本来はそんなゆるい異同識別じゃ不十分らしいな。

本来は不十分だけど、似ているヒ素がないんだったらまあこんな程度の鑑定でいいだろうと?

ひき逃げ事件で、現場の遺留品から「外車」と判明した、貧乏人が多い地域で「外車」といえばAさん宅ぐらいしかないから犯人はAさんでええんちゃう? っていうような話や。

なんなのそれ! ようするに結論ありきの「なんちゃって鑑定」じゃない。国内に似ているヒ素がないのが分かっているんだったら、そもそも鑑定する意味自体がないじゃない。

河合潤博士も同じ批判をしてはるで。

つまり検察側は、ドラム缶Qを科警研に分析させて、林家ヒ素と同じだったからあわてて隠蔽し、中井教授には、国内に同じヒ素はないからとウソを言って、それを受けて中井教授は「ゆるい」鑑定で済ませたってことじゃない?

そういうことや。「類似した特徴を与える亜ヒ酸が当時の国内には,他に流通していなかった」なんて中井教授が知ってるはずないから、検察が教えたんやろな。

林家ヒ素の「希少性」を維持するために検察も必死だったわけね。
判決文は、Aの〝きょうだい〟60缶を隠蔽した

ヒ素の希少性の維持のために「隠蔽」したのは裁判官もやで。

裁判官も隠蔽を? どういうことなの?
〝きょうだい〟を無視した恣意的な比較

林家のヒ素のルーツとなるドラム缶Aやけど、判決文に登場するのは、健治さんが1983(昭和58)年に購入して以降なんや。赤下線だけ読めばええで。


裁判所は、G(紙コップ)とA(ドラム缶)が「製造段階において同一」と認定したのに、その製造工場とか時期とかは書いてないの?

輸入される前のことがまったく書いてへんねん。でも「鑑定不正」によると、ドラム缶Aは、1983年頃に輸入された60缶のなかの一つなんや。


裁判にこんな証拠が出されていたのね。じゃあふつうに考えて、そのきょうだい60缶のなかに林家のヒ素と同じ組成のヒ素はあるんじゃないの?

あるやろな。

そのきょうだい60缶とAは比較してないの?

してへん。

ようするに、同じ場所でうまれて同じ組成である可能性が高い〝きょうだいヒ素〟とは比較せずに、そもそも同じ組成だとは思えないヒ素とだけ比較して「林家のヒ素は希少」と結論したってこと?

そういうことやな。

またまたインチキね! まともな裁判官なら、きょうだい60缶がどこに購入されていったのか検察に調べさせるものじゃない? 林家ヒ素がどれぐらい希少なのかはこの裁判の最重要ポイントの一つなのよ?

カレ子の言うとおりや。

検察がヒ素の希少性を維持したいがために同じ組成のヒ素を隠蔽するのは、良し悪しは別にしてわからないでもないけど、裁判官はちゃんと訴訟指揮しなさいよって言いたいわ。無罪方向の証拠は見たくなかったとしか思えないわ。
「つっこんで書いたほう」の朝日記事

ほんまやで。ワイがG-Searchで記事を調べた範囲やと、ドラム缶Aのきょうだい60缶について書いたのは2000年7月15日の朝日新聞だけや。
検察側は「真須美被告の実兄が預かっていたドラム缶の亜ヒ酸と同じ亜ヒ酸は中国から日本に六十缶輸入されているが、その大半は奈良県内の会社で使われたことを確認している」として、同一の缶に由来していると主張している。(2000年7月15日 朝日新聞大阪地方版)

「大半は奈良県内」って、いくつ? 40缶ぐらい? あと20缶はどこに行ったの? 「大半は奈良県内」がわかったなら、残りも調べがついているはずよね。

ついてるやろな。

そこを追及せずに、「同一の缶に由来している」なんていう検察のコメントを垂れ流しちゃうあたりがズッコケよね。そもそも「同一のドラム缶」かどうかまで分かるわけないじゃない。

せやな。このイメージ画像でいえば、

ドラム缶Aと周辺のドラム缶のヒ素は、同じ組成とみてええやろ。それをB〜GがすべてA由来と断定なんてできるわけないわな、中国のその工場に行って調べたわけでもないのに。

そうよ。だから裁判所だって「同一のドラム缶」と書きたかったでしょうに「製造段階が同一」としか書けなかったんだし。

科警研の職員も、同じドラム缶由来かどうかはわからんと法廷で証言したんやで。
第三十五回公判が十四日、和歌山地裁(小川育央裁判長)で開かれた。この日は、警察庁科学察研究所(科警研)の技官が証人として出廷。祭り会場に残されていた紙コップに付着していた亜ヒ酸と、真須美被告の旧宅などから見つかった亜ヒ酸六点を「同一」と鑑定したことについて「同時期に同じ工場で同じ原料から作られたということはできるが、同じ缶に入っていたかどうかは判断できない」と証言した。(2000年7月15日 朝日新聞大阪地方版/和歌山)

ほんとだわ。正直な人ね。

まあ朝日はつっこんで書いたほうや。当時の新聞記事で、林眞須美先生の無罪を示唆するようなのは皆無や。B〜G、特に青色紙コップGのヒ素がドラム缶A由来でないということは、林眞須美先生は即無罪やからな。

弁護団の主張としてなら書けるけど、独自の取材としてはそんなこと書けないし、書こうと思いもしなかったんでしょうね。
確定一審判決の「真意」

それにしても、検察側に好意的にみて、A〜Gが「製造日が同じ」とまで言えるとしても、ふつうに考えて、同じ日に作られたドラム缶ヒ素がAだけってことはないでしょう? 複数あるはずよね。

そうやな。1日1缶しか作らんってことはないわな。

だから、同じ組成のヒ素がよそにもあるのはそもそも当然なはずだけど、確定一審の判決文は、そのこともスルーしているの?

ええ質問や。確定一審の判決文には、「同じ組成のヒ素はそもそもAだけではない」と認めたところが1ヶ所あるで。


ほんとね。「ほかに製造段階において同一である亜砒酸があることまで否定するものではない」と書いてあるわ。

それを認めたうえで、同じヒ素があったとしても、それがカレー鍋に入れられたかどうかは「その他の情況証拠によって総合的に認定されるべき問題」やと。

なるほど。検察側の証拠の不十分さをよくわかってて、先回りして批判をつぶしている感じね。

せやな。で、「その他の状況証拠」の筆頭が最高裁判決(3)の「犯行機会」やろな。

ああ、12:20-13:00のガレージね。つまり確定一審判決が言いたいのはこういうことかしら──。
林家ヒ素と同じ組成のヒ素がどこかにあったとしても、それが1998年7月25日12:20-13:00に和歌山市園部のあのガレージのカレー鍋に入れられた可能性があると思うのかい?

そういうことや。

裁判所としては、「ヒ素の同一性」よりも、「犯行機会」を有罪の「ラスボス」と考えているのかしら?

そうかもしれへん。確定一審判決の総合評価を読んでも、直接証拠がないから、消去法で「林眞須美以外考えられない」としか言えへんのがよくわかるで。そのへんの話はこの記事でも書いているで。
同じヒ素の存在を「官僚答弁」で否定した浅見決定

あとそういえば、ドラム缶Aのきょうだい60缶を確定一審判決が隠蔽したのはわかったけど、それについて浅見決定はなにか判断したのかしら?

それもええ質問や。弁護団は第一次再審の浅見コートで、きょうだい60缶に限らず、中国から多数のヒ素が大阪に輸入され流通していた実態を指摘したんや。


弁護団のこの主張も、ヒ素の希少性を崩す狙いね。

そういうことや。

で、浅見決定はどういう判断をしたの?

簡単にいえば、言うほど多数は流通してなかったよな? という判断や。



言うほど多くなかったとはいえ、流通していたことは認めているんでしょう?

そうやな。

カレー鍋に入ったヒ素は何gだっけ?

135gや。

だったらまたまたインチキじゃない! 135gあればいいんだから、流通量が多数か少数かなんて関係ないわ。いわく言い難い鬱屈を抱え込んだ人の生活圏内に135gのヒ素が〝あり得たかどうか〟の問題よ。裁判官はそこを無視してマクロの流通量の話にすり替えているわ。

せやな。購入した全業者がヒ素をすべて使い果たしたというわけでもないやろしな。ドラム缶だか小分け販売したビニールだかの中に、紙コップ半分強ほど残っていればええ話や。

ほんと、典型的な官僚答弁って感じね。相手の質問の核心を微妙にズラしながら答えているわ。

確定一審の判決に、林家のヒ素と同じ時期に同じ中国で作られたヒ素がいっさい登場しなかったことを考えれば、同じ組成である可能性が高いヒ素がこれだけ輸入されていた事実はめっちゃ重いはずやのにな。

こうなってくると、和歌山・大阪の61このヒ素と林家ヒ素を比較して同じものがなかったというのも、検察は、ないと分かっていて分析を依頼したのかと思えてくるわ。

それもあり得るな。「1980年代前半に中国から輸入されたヒ素」を除けばええだけやから簡単だったはずや。


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